
今月17日から始まるFILTR講座「人類学の古典に親しむ」。今回扱うのは、人類学の理論書には必ず掲載される『汚穢と禁忌』(by メアリ・ダグラス)。
開催に先立ち、「期待していること、不安なことなどあればお書きください」というアンケートを受講生の皆さんにお送りした(任意)。
すると、すでに読み始めた受講生の皆さんから「難解すぎて理解できません」、「日本語ってこんなに難しかったっけ?」、「最初の数ページからわかりません」という声が届いている。ついには、わからなすぎて心細い、という吐露まで。
いや、そうなりますよね。特に1章なんて、と思う。
「わかった風」よりずっといい
この本を理解するにあたってどうしても必要となる知識があって、それは下記の2つ。
(1)19世紀後半から20世紀前半のイギリス人類学の流れ
(2)ダグラスに多大な影響を与えたフランスの社会学者デュルケムの思想
なので、この辺りを知らなければちんぷんかんぷんになのは当然だし、逆にこれらを知らないままにわかった顔をする人がいたら、「本当に理解したの?」と疑ってしまう。それかものすごい秀才かどちらか。
なので率直に「全然わからない」と言ってもらった方が安心する。
1つの学問を深めるにあたって障壁になるのは「わかった風」を装うこと。だが困ったことに、「わかった風」を装う人は、とってもたくさんいる。
なのでまず序論を開き、「わからない」という実感を得られたこと。加えてそれを「わかった風」で誤魔化さず、そのまま言葉に出してみたことはとても重要な学びの一歩だと思う。
私もできる限りの力を尽くし「全然わからない」が、「ここがわかって、面白い!」になるよう工夫します。なので講座開始までは「わからない感」を味わっていただければと思っています。
古典の面白さ
『汚穢の禁忌』に限らず古典というのは、大体とっつきにくい。
でもなぜそれが当該学問の古典とされ、多くの人に読み継がれているのかは、その古典が書かれた文脈やその後の学問の展開を知るとわかってくる。
そうすると、以前はさっぱりわからなかった箇所が突然理解できるようになったりする。しかもそれが数年とか、十年といった単位でやって来るのも面白い。
とはいえこういう理解は、「一言で解説してほしい」欲望とそれに応えるサービスがどんどん生まれる現代社会にはあまりそぐわないんだと思う。
でもワンフレーズで理解するのは、人気のお菓子を食べ、映える写真をSNSに上げ、次のお菓子に目移りするようなもの。
そういう理解の仕方もあるんだろうけど、だったら「ワンフレーズになるまでの過程」を学ぶ方がよっぽど古典を味わえると思う。
またどうしてもワンフレーズにしたいんだったら、誰かのワンフレーズを暗記するんじゃなく、自分だけの「ワンフレーズ」を作ってみたらどうだろう。
ご紹介したFILTR講座「人類学の古典に親しむ – メアリ・ダグラスというエアポケット」 の第1クールは前半・後半とも完売となっております。お待ちの人数によっては、第2クール開講の可能性がございます。ご関心ある方は販売サイトの「再入荷お知らせ」よりメールアドレスのご登録をお願いいたします。
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