今年1月から共同通信が全国の地方紙に配信する「論考2022」を担当した。早いもので来月が最終回。
この「論考2022」。時事問題に絡めてあればテーマは自由。10月配信の国葬を除いては、担当さんと私で話し合ってテーマを決めた。
これまで書いてきたテーマと切り口は下記。 (初めに来ているのがテーマ。「と」の後が切り口)
- 感染予防 と 身体の煩わしさ
- メタバース と 言葉
- 新型コロナウイルスワクチン5〜11歳への接種開始 と 異物の扱い
- ウクライナ戦争 と 境界
- 発達障害 と 分類
- HPVワクチン積極的勧奨再開 と 日本社会の特徴
- ラン活 (=ランドセルを買うための活動)と 象徴
- 旧統一教会問題 と 日本の宗教
- 国葬 と 弔いの意味
- 育毛・脱毛・ダイエット と ありのままの身体
- ただいま配信中
- これから配信
これらテーマを、文化人類学と絡めて1600字にまとめて書くのは瞬発力のいる作業でなかなか難しかった。一番工夫したのは切り口。
とはいえ、私の担当は月1回。かつ新聞で1600字というのは相当の長さ。
なので、もっと短い記事を毎日コンスタントに出し続けないといけない新聞記者さんは、日々をどんな気持ちで過ごしているのかと想像した。
昨今は社会状況の展開がとても早いため、のんびりしている私の研究テーマはいつも歴史モノみたいになってしまう。糖質制限とか、HPVワクチンとかはその典型。
加えて研究者目線では1600字はとても短い。
なので始めたばかりは、時事問題を追いながら、どうやってそれを人類学で語ればよいかについてかなり右往左往した。
特に国葬の回は、このまま行ったら原稿を落としてしまうのでは、と焦った。
でもやっていると少しつづ慣れてくるもので、どうやって書き出し、どうやって人類学と繋げ、どうやって結論に持っていくのかの感覚は少しだけ掴めた。
また、身体、境界、病気、交換、宗教といった人類学の大きな柱は時事問題を捉えるのに実に有効であることを改めて確認できたことも大きな収穫だった。
しかし選んだテーマを一覧で振り返ると、病気と身体に関するものが多い。どうしても自分の関心は反映されてしまう。
兎にも角にも、こんなコーナーを担当させてもらう日が来るなんて夢にも思っていなかった。生きているといろんなことがあるものです。