独立2年半を振り返る

大学教員をやめてから、3回目の夏がやってきた。

大学を出た当初は、年収200万円台とかが2−3年続くことを覚悟をしていたけれど、幸いそんなことにはならず、楽しく暮らすことができている。

でもきっと、この順調さはバブルみたいなもので、何かをうっかり間違えたり、あるいは何も間違えなかったとしても、あっという間にそうなる可能性もあるのだだろう。

とはいえ、この2年半で考え、実行し、感じたことは、大学教員時代の10年よりもずっと色濃い。だから「独立なんかしなければよかった」とは全く思わない。

下記、これまでに気づいたこと、感じたこと、考えたことを思いつくままに書いてみたい。

出逢いに感謝。シューレと林さん

人類学を大学の外に開くという目的で2016年から始めた「からだのシューレ」。人類学を大学の外で展開するという試みを、2020年以前から数年に渡って続けていたのは幸運だった。大学の外に、人類学を求めている人がいることは、実感として知っていたから。

でもシューレのはじまりは、メンバーの林利香さんがいたからできた。私1人だったら、妄想で終わっていたと思う。林さんが、私の苦手なところを完璧に補佐してくれた。この2年半も林さんなしでは乗り切れなかった。

出逢いに感謝。FIILTRと二宮さん

これまでのポストでもふれたけど、二宮明仁さんとFILTRを始められたこと。これがものすごく大きかった。飛ぶための滑走路を作ってもらった。

二宮さんと出会っておらず、「独立したんですよね〜」と彼に話していなかったら、今より世界は楽しくなかったのではないか。そんな気すらする。

二宮さんは、突破する手前の過程がとても丁寧で緻密だ。

これが彼の力の源泉の1つでは、と思っている。

行われていることの一つを取り出せば、どれもそこまで珍しいものではないのかもしれない。でも一つ一つへの取り組みが緻密で、それらの組み立てが丁寧であると、全てが合わさった時、それは足し算ではなく、掛け算となる

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出会いの種を蒔いてくれた人

私と二宮さんとの出会いのきっかけを作ってくださった方がいる。その方は、あるカルチャーセンターで私が講義を持っていた時の受講生だ。

私は、その方にお声がけをいただき、ある勉強会に参加するようになった。そこで出会ったのが二宮さん。

この前、その方に「なぜ私に声をかけられたのですか?」と聞いてみた。すると、「磯野さんは、質問から逃げなかったんですよ」という答えが返ってきた。

彼はこのセンターでたくさんの講座を受講しており、修了書までもらっているベテラン。そんな彼の目から見ると、質問から「逃げる」講師がほとんで、そうでない私は目立ったようだ。

循環器疾患のフィールドワークをサポートくださった専門医の上田みどりさんが「見ている人は必ず見ています」とおっしゃっていて、これはずっと私のお守りみたいな言葉になっているのだが、本当にそうだった。

ちなみに私は、上田みどりさんが、抹茶ラテが好きなのがたまらなくキュートだと思っている。

力をくれた人たち

FILTRで開いた「他者と生きる」、「聞く力を伸ばす」。任意のレビューシートの回答率が毎回40〜60%くらいあり、受講生の皆さんのモチベーションの高さに胸熱。全国のみならず、世界のいろいろな国に散らばる方に出会うことができた。

からだのシューレで開いた「ダイエット幻想読書会」。FILTR講座よりも長期間、ゆっくり行ったせいか、オンラインであったのにその空間に少しずつ信頼が生まれている印象があった。

オンラインの可能性を感じた2年半。でも、だからこそ直接出会うことも大切にしたい。

独立していなかったら、ここに来てくれた人たちにも会えなかった。それは寂しすぎる。

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計画と私

計画を立てるのが驚くほどうまくなった。教えられちゃうんじゃないか、と思う時もある。あまり長くない原稿であれば、言われた締め切りの数日前に出すことも珍しくない。2年半前の私では想像もつかなかった変化。七転八倒の工夫って大切。

人って変わるのね

逃げられることを忘れない

大学組織の外でも生きていけそうなことが判明したことで、どうしても相入れないあれこれから離れることが可能になった。が、意識していないと、いみじくも入り込んでしまうので、そういう時は、「なぜあなたは辞めたんですか?」と問いかけるようにしている。

できないことを見極め、そしてやらない

「これはちょっとおかしくないか?」

そういう事件が起こったときは、少数の信頼できる人に相談する。その人たちのアドバイスが「(それは相当やばいけど)うまくやった方がいい」だった場合は、「うまくやらない」選択をする。だって私は、うまくやれないのだから。

最高の比喩

「うまくやろうとしている真穂は、無理やり散歩させられている猫みたいで悲しくなるからやめてほしい」。

独立前に、こういう言葉をかけてくれたパートナーには感謝しかない。

新型コロナ

大学を独立してからすぐ緊急事態宣言が発令された。医療崩壊を防げ、弱者を守れ、命を守るために自粛をしろ、そんな言葉が踊る中、私はハローワークに通っていた。

失業者がを開館30分前から列を作り、社会的距離を取るために館内の椅子は減らされ、立ったまま1時間以上も待つ人が続出していた。

でもそこにメディアの姿はなかった。誰かがここに向けて「大切な命」といっている様子もなかった。失業者には札束が渡ればそれでいいのだろうか。

情報空間を埋め尽くす言葉たちとの自分との圧倒的な断絶を感じた日々。

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