熊を恐れる友人とめ(仮名)は、都内のおしゃれな場所で生まれたシティガールである。しかし、眼光は鋭い。
思わず書いた「しかし」に、都会に生まれた女性への偏見を発見し、ぎょっとしているが続けよう。
彼女とはもう10年の付き合いになるが、先日彼女が熊を恐れていることを知った。私は長野の田舎生まれなので、小学校の頃は、「あの山から熊が降りてくるのを見た」といった話を年に1回くらい聞いていた。他方どうみても、とめの住むおしゃれな地域に熊はいない。あそこはカフェしかない。プーさんすらいそうにない。
しかし、そんなところに住んでいるのに、とめは熊を恐れている。登山が好きだかららしいが、登山好きが皆熊を恐れているとは言えないだろう。
とめは熊ベルだけでなく、熊スプレーも持ち、熊の被害に関するニュースをまめにチェックしている。
とめの熊話を聞き、「一思いに殺してくれるなら熊に食われるのもありだと思う」と話したら、「足とかお腹から食べられたらどうするんですか?」と真剣な顔で言われた。確かに、それは考えただけで苦しすぎる。「進撃の巨人」を見た後では尚更だ。
その日の夜、とめは早速、熊については避けて通れない二つのニュースを送ってきた。
一つは、大学生5人が熊に襲われた事件、もう一つは史上最悪の熊事件と言われる「三宅別熊事件」。
全く知らなかったのだが、これは凄まじく悲惨な事件である。熊、確かに怖い。
とめによると、熊は執念深く、またツキノワグマよりもヒグマの方が危険であり、でもだからと言って、ツキノワグマにも油断してはならないらしい。
私は、本を書く際、担当の編集者さんにあだ名をつける癖がある(でもご本人にはいわない)。
最近担当くださった方は心の中で「くまさん」と呼び、かつ私の方が小さいため、自分を「こぐま」とし、勝手に「ベアーズ」というユニットを組んでいた。しかしこの話を聞いて、ユニットは解散しようかと思った次第である。
まあ、結成されてもいないんだけど。