すでにご存知の方も多いと思いますが、私は今年の4月より大学を離れた活動することを決断しました。それもあって自分が人類学を通じて何をしてきたのか、したいのかをより強く意識するようになり、一つの結論が出たのでここに記します。
問いを届ける
今年の11月にようやくたどり着いた言葉です。
おそらく多くの人々は、先ゆく未来の不安を消してくれるような強い答え、正しい答えを求めていると思います。でも私の人類学は答えではなく、問いを届けたい。
問いは人を未来に導いてくれるような力強い声とはならないかもしれません。でも問いを持つだけで世界と向き合う方法、呼びかける声、交流の仕方を変えることができます。
新しい問いは、私たちの周りには新しい空間を立ち上げます。それは自由に動ける余白を作り出す行為といってもいいでしょう。でも私にとってそれはもっと立体的なものなので、ここではやはり空間という言葉を使いたいと思います。
思えば2016年3月に「からだのシューレ」を林利香さんと立ち上げた時、初回から掲げ続けたフレーズが「カラダと社会の間に自由に動けるスキマを作る」でした。
身体や食べ物のことで悩んでいる人は往々にして社会から与えられる「正しさ」に押し潰されています。人類学はその正しさを一蹴することも、新しい「正しさ」を提示することもできないけれど、その正しさから距離をとったり、迂回する方法を提示することはできる。
そう思って始めた企画でした。
でもシューレを立ち上げた時、フレーズは作ったものの、このスキマをどうやって作り出すかについてはほとんど意識していませんでした。でも今はそれがよくわかります。
言語化はできてはいなかったけれど、私は「問いを届ける」ことで、そのスキマを参加者の皆さんそれぞれの立場から作ってもらおうとしていたのだのだと。
他者と関わる。問いを届ける。
そして2020年の7月末から、二宮明仁さん(@aktona)と始めたFILTR人類学講座「他者と関わる」。全く先の見えない中立ち上げた企画でしたが、思った以上に多くの方にご来場いただきました。もうすぐ第3クールは終了し、第4クールの募集で「他者と関わる」は最後となります。
講座立ち上げ時のポストはこちらをお読みください
「他者と関わる」には全国から(第3クールは海外からも!)200名を超える方々が来てくださっており、職業は、医療専門職、現役大学生、専業主婦、自衛官、包丁屋さん、メディア関係者、UXデザイナーなどなど本当に様々です。
そのような皆さんが提出してくれるレビューシートを見ると、「問いを届ける」という私の理念、そこから生まれる対話、それを通じて立ち上がる空間を、皆さんが楽しんでくださっている様子が伺えます。
こういう言い方は少々憚られるけれど、人類学を通じて「問いを届ける」という私の試みは、多少なりとも意味があるのではないか。そう思えて励まされています。
次のポストで少しだけ「他者と関わる」に来てくださった受講生の皆さんの声を紹介させてもらいます。