書評の書き方・選び方 – 選び方編

今年4月から始まった朝日新聞書評委員のお仕事。時はあっという間に過ぎ去るもので気づいたら既に担当した書評は7本。(全てこちらからご覧いただけます)

単発の書評はこれまでもあったけど、定期はこれが初めて。思いのほかとても楽しくやらせてもらっている。

最初の2回くらいは完全に手探りだった。でも最近は、自分なりの基準で選び、また自分なりの工夫で書けるようになってきた。

今回は選び方について。基準にしているのは3つ。

(1)内容 

(2)筆致

(3)価格

リストにしたら、とてもありきたりな感じになったが、それぞれ意識しているのはこんなこと。

(1)内容

世代で見ると新聞読者は、50代上の世代がボリュームゾーンとのこと。なので、その人たちが知っておくとよいだろうテーマを扱っていたり、面白い視座を提示しているものを選んでいる。

たとえば「Body Sharing」(著 玉城 絵美)はその一例。

50代より上の世代で、Body Sharingなんて聞いたことがない人がほとんどだろうけど、近いうちに間違いなく、こういう世界はやってくる。

(2)筆致

専門家ではなく、市井の読者を意識した書き方になっているか。独りよがりになっていないか。

なので、テーマは大切なことを扱っていても、その先に具体的な読者が意識されていないと感じられる本は外している。

逆にテーマはありふれていても、それへのアプローチが独特で、かつ言葉の先に読者が意識されている本は選びたいと思う。

たとえば、「本が語ること、語らせること」(著 青木海青子)がそれにあたる。

(3)価格

大学教員になると、本が買いやすくなる。それは生活が安定することもあるけど、研究費があることが理由。

結果、5000円以上の本でも躊躇いなく買えてしまう。でも、そうじゃない人が1冊の本に3000円以上出すかしら?、と思う。書評で載っていても、その本が4500円だったら迷わない?

なので3000円以上する本を書評するときは、教育関係者や自助グループの運営、NGOやNPOに関わるような人たちを頭に浮かべ、その人たちが長きにわたって使える本を選ぶようにしている。「月経の人類学」はまさにそれにあたる。

知り合いの本を選ぶか問題

私の周りは本を書いている人が多いので、必然的に知り合いの本が候補に入ってくることがある。初めのうちは、知り合いの本を選ぶのはフェアでないと感じ、意識的に外していた。でも、それは途中からやめた。

というのも、「知らない人の本を選ぶ」ことは、「知っている人の本を選ぶ」ことをひっくり返しただけで、何も変わらないと思ったから。知っている人が書いた良い本が、磯野が知っている、という理由で外されるほうが変ではないか。

なので、知っているか知らないかはさておき、上の3つの基準で選んでいる。

次回は書き方編。

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