共著者が倒れる−「急に具合が悪くなる」を読んでくださった皆様へ(20)

去年の七夕に宮野さんが救急搬送されてから、ある人がかけてくれた忘れられない言葉があります。

「真穂の決断は、宮野さんの決断。宮野さんの決断は真穂の決断。宮野さんと真穂は仕事のパートナーなんだから、片方が倒れたときは、立っている方の決断が二人の決断になる。もし倒れたのが真穂だったら、宮野さんが決めていかないといけなくなる。その時真穂は、宮野さんの決断に文句を言うか?」

彼女が倒れてから、一番きつかったことの一つは、出版に関する諸々の決断を私一人で為さないといけないことでした。

「急に具合が悪くなる」の大きなテーマは決定です。しかし彼女が倒れてからの「決定」は意味が異なりました。というのも、二人の本でありながら、そのうちの一人の意志はもはや確認ができず、でも本は二人のものとして出るからです。

いったいどうやって決めていけばいいんだろう?そうやって悩む私の方向性を指し示してくれた言葉が、「宮野の決断は磯野の決断。磯野の決断は宮野の決断。仕事のパートナーとはそういうもの」という冒頭で紹介した言葉でした。

とはいえ、その道のりというのは正直に告白すると「この後のラインは私が引き継いでやっていく」と言ったことを数回後悔したレベルで苦しいものがありました。そしてこの苦しさは、私がこの書簡の生きている方の著者である限りずっと続いていくのだろうと思います。

でもそんな時は、机の前にいる宮野さんによく話しかけています。

「あのさ、結構大変なんだけど。あなたがいなくなってから。どうしてくれんのさ」

「ごめん、ごめん。いそのさん苦労してるよね〜」

「でもやっぱ、一番大変だったのはみやのさんだったから、まあいいってことにするわ」

「すまん」

「すまん」というのは、ICUにお見舞いに行った私に彼女がかけた言葉です。

彼女はICUから、1通だけ、とても短い、全部平仮名のLINEを送ってくれました。あれだけの鬼気迫る文章を書いていた人がここまで一気に弱ってしまう。病気の力に慄きました。

でも私は、文章を書けなくなった彼女が、最後に私に死に様を見せてくれたことにとても感謝をしています。不謹慎と言われるかもしれませんが、偽らざる気持ちとして。

去年の8月5日はそんな混乱の中、「急に具合が悪くなる」の付記と「ダイエット幻想」のおわりに を同時に書き上げた日です。当然ながら、どうしようもなく共鳴している二つの本の最後の文章を、お手元にある方は読んでみてください。

関連記事