東工大で初めての文化人類学の講義を担当するに当たり、次の達成目標を掲げた。
文化人類学で遊ぼう
次に、これを達成するための授業設計として、次の3つを心がけ設計に落とし込んだ。
1. 学生がChatGPTを使う前提で授業設計をする
2. 文化人類学を「記憶」するのではなく、「考えて・使う」授業をする
3.教員がやっていて楽しい
1. 学生がChatGPTを使う前提で授業設計をする
ChatGPTを使ったとしても、自分たちで考えたほうがより面白いと感じられる設計にする。
2. 文化人類学を「記憶」するのではなく、「考えて・使う」授業をする
人類学者を育てる授業ではないので、正確に記憶することより、ざっくりとした理解をもとに、それを考えて、使うことを重視。
とはいえ、最近の「詰め込みはダメだよね」という流れについては、安易で浅すぎると思っている。そういうのが必要なフェーズもあるでしょう。
3. 教員がやっていて楽しい
これ結構大切。というより、ここを実は相当重視した。教員がつまらないと感じていると、学生にもそれが伝わり、みんなでつまらなくなる。こうなると負のスパイラルで、結果的に学生が不利益を被る。
具体的にはどうやった?
具体的には、学生に文化人類学の基礎知識を学べる資料をリーディングとして配布し、前半はそれをもとにしたディスカッション。後半は、21世紀の理想の身体をテーマに、グループで小説を書いてもらうことにした。
人類学を使って小説を書くというアイデアは、社団法人De-Siloが今年4月に実施したDe-Silo Experimentで、試してみたものだ。
Experimentの際は、私が書いた小説、およびそこからスピンオフをした、李琴峰さん、山内マリコさん、松田青子さん、それぞれの小説をもとにしたワークショップ(協力:浅田シオン)を行った。
こちらも大盛況であったけど、授業は14回(110分/回)あるので、学生はワークショプを体験した後で、実際に小説を書いてもらうことに。
結果どうだった?
どのような小説が出てくるか全く想像がつかなかったけれど、文化人類学の考え方を使いながら、かれらが考えた未来の身体についての小説はどれも大変面白く、私としても学びが多かった。
ちなみに私が今回担当した講義は「文化人類学C」という名称で、医療人類学の内容が中心。一応立て付けとしては、文化人類AとBをとっている学生が来る予定だったんだけど、蓋を開けたら、そのような学生は誰も来ず、「文化人類学ってなんだろう」と素朴に思っている学生がやってきた。
私は新任なので、昨年の授業の噂などを当てにして選択をすることは不可能。「何かを始める前にまず検索という時代」にあって、検索ゼロで、しかも「小説を書きます」とシラバスに書いてある、怪しい講義を選択した学生たちを、私は猛者と呼んでいました。
大変面白く、最終回も感慨深かったので、最後に記念の写真を撮らせてもらいました。
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